就活お役立ち情報

就活予報-あした晴れるかな-

執筆者 中山一郎先生(流通科学大学人間社会学部教授)
≪メールマガジン第97号≫2020-03-02配信
【就活予報 - あした晴れるかな -(第12回)】


<ボキャブラリーが増えると人生も豊かになります。>


 今回でいよいよ私のコラムも最終回を迎えることとなりました。
 最後に「キャリアカウンセラーあるある」をひとつ紹介したいと思います。
 履歴書の添削にやってきた学生に、それを読んだカウンセラーが「きみの伝えたいことはカクカクシカジカで、つまりはこういうことが言いたいんだね」と復唱してあげますと、「そうです! 僕が言いたかったことはまさにそれなんですよ!! 先生はどうして僕の言いたいことがわかるんですか?」。これは、実はキャリアカウンセラーがよく経験する「あるある」です(笑)。
 どうしてわかるんですか、と訊かれてもキャリアカウンセラーは魔法使いではありませんので、もちろんひとの心など読めません。結論からいうと、カウンセラーはその文章を他のボキャブラリーで「言い換え」か「要約」をしてあげているだけなのです。
 例を挙げてみましょう。たとえば「山本さんのカウンセリングはハッキリと言ってくれますので、それなりにタメになります」という文章。この文章での添削ポイントは2ケ所。まず「ハッキリと言ってくれる」という表現。これでは山本さんに対してあなたのカウンセリングはとても厳しいですよ、と言っているようなもの。次に「それなりにタメになります」という表現。それなりに、という表現は完全な上から目線です。まさに慇懃(いんぎん)無礼です。そこでカウンセラーはあえてこう復唱してあげるのです。「山本さんのカウンセリングは的確にアドバイスをしていただけるので、私なりにはとても興味深いです」ということですね、と。そうしますと、先ほどの「僕が言いたかったことはまさにそれなんですよ!!」となってくるわけです。
 また自己㏚などで、「私は常に自分の頭で考えて行動し、どんな困難があっても最後までけっしてあきらめることなく、必ず目標を達成します」などという学生には、「つまり…きみは仕事においてもPDCAサイクルを回せるひとだということですね」と言ってあげます。これは「要約」ですね。長々と文章で説明をしなくても、相手がビジネスマンであればこのひと言で瞬時に伝わるキラーワードです。するとまた例の「僕が言いたかったことは…」となってくるわけです(笑)。
 ボキャブラリーが増えるということは素晴らしいことです。これまでの人生の失敗も挫折も言い換えることができるようにもなるのです。言い方が変われば、新しい見方が出来るようにもなる。すなわち人生が豊かになってくるということなのです。
 最後になりましたが、第1回目のこのコラムでご紹介させていただいた言葉で締め括らせていただきたいと思います。「人生はいつも今日から!」。
 1年間ご愛読いただきまして本当にどうもありがとうございました。
≪メールマガジン第96号≫2020-02-03配信
【就活予報 - あした晴れるかな -(第11回)】


<どうすれば伝えたいことが伝わるのか>


 大学の中山ゼミでは自分の大好きなことをテーマに取り上げて、それがどれだけ好きかということをゼミ生全員の前で一人ひとりプレゼンをさせています。ジャンルは一切問いません。スポーツ、映画、音楽、アニメ、ゲーム、本、場所、恋人自慢、旅、SNSなどなんでもOK。ただし一つだけルールがあります。プレゼンをするにあたって、必ず ①統計やデータを用いて図か表を作成して発表するか(量的調査といいます)、もしくは ②テーマに関係のあるひとにインタビューをしてきて発表するか(質的調査といいます)のどちらかひとつを選んで発表に取り入れなさいということだけです。ちなみに今年のゼミ生たちのテーマを紹介しますと、「仮面ライダーの魅力」「ジョジョの奇妙な冒険」「阪神タイガースの魅力」「読売巨人軍の魅力」「アクセサリーとジュエリー」「声の吹き替えの歴史について」「#GoProのある生活」でした。
 自分の大好きなことをひとに伝えるというのは一見易しそうで実はとてもむずかしいことです。たとえばGoProというのは、動きのあるアクションシーンやアクティブスポーツ、迫力のある景色などを臨場感たっぷり伝えることのできる今流行りの小型カメラのことなのですが、「GoProって、めっちゃスゴイでぇ!」「とにかく使ったらオモシロイねん!」などといくら熱く語ったとしても、いったい何が凄くていったい何が面白いのか。見たことも聞いたこともないひとたちにはさっぱり理解できないでしょう。 
 知らないひとに何かを伝えようとするとき「主観的」な思いや熱さだけではけっして伝わりません。必要なのは「客観的」な落ち着きと冷静さです。なので、私はゼミ生たちにその「主観的」な高ぶりをひとまずクールダウンさせるべく、あえて統計・データかインタビューでの調査を義務付けているのです。自分の大好きな対象をいったん相対化・比較化させて眺め直させてみるのです。簡単にいえば、読売巨人軍の魅力を語るためには、阪神タイガースの魅力も知っておきなさいよ。阪神タイガースの魅力を語るためには読売巨人軍の魅力も一応調べておきなさいよ、ということです。
 大学生は3月からいよいよ就活本番ですね。「自己㏚」や「志望動機」や「大学時代にがんばってきたこと」で何を書けばよいのか迷っているみなさん。家族や知人や友人に自分の長所や強みを改めてインタビューしてみては。あるいはその長所や強みをいちど数値化・データ化してみては。私は常々ゼミ生たちにこう言っています。「自分の大好きなことすらひとに伝えることができないようでは、とうてい他のことは何にも伝わらないよ」と。ポイントは客観的な事実を人事担当者に伝えるだけでよいのです。
≪メールマガジン第95号≫2020-01-06配信
【就活予報 - あした晴れるかな -(第10回)】


<その幸運は偶然ではありません>


 新年 明けましておめでとうございます。「一年の計は元旦にあり」といわれますが、気持ちも新たに目標や計画を立ててがんばろうというひとも多いことかと思います。
 しかし、そんなひとたちに水を差してしまうような話で少々気が引けるのですが・・・「人間のキャリア形成(就職とか転職等)のきっかけのほとんどは偶然である」という説を提唱した研究者がいます。元スタンフォ-ド大学教授のジョン・クルンボルツ博士です。博士の理論は「プランド・ハップンスタンス(計画された偶発性)」とよばれ、偶然がキャリア形成に与える影響に注目し、であるならば努力は「いい偶然」を招き寄せるための計画や習慣にこそ向けられるべきであろうということを主張しました。
 いわれてみれば、わたし自身も子どものときからキャリアカウンセラーや大学の教員になることを目標に生きてきたわけではありません。人生、それなりに紆余曲折を経て、結果として今の職業に就いているというのが正直なところです。というか、そもそもわたしが子どもの頃にはキャリアカウンセラーという職業などありませんでした(笑)。今の職業に就いているのはまさに偶然としか言いようがありません。
 しかし、クルンボルツ理論の面白さと魅力は、ひとは努力をすれば「いい偶然」を招き寄せることは可能であると科学的に実証したことです。では一体どのような努力をすればよいのか。博士が提唱したのは、①好奇心(視野を広げて興味や関心を持つ) ②粘り強さ(続けていれば新たな展開の可能性が増える) ③柔軟性(状況に応じて対応することでチャンスをつかむことができる) ④楽観性(何事も自分が成長するかもしれないとポジティブに捉える) ⑤リスクテーク(積極的にリスクをとることでチャンスは掴める)という5つの姿勢や態度を身につけることの重要性でした。努力してこの5つの姿勢や態度を身につければ、起きた偶然を機会(チャンス)と捉え、自らの力で幸運に転換させていくことも可能だというのです。
 「あのときにあのひとと出会っていなかったら今の自分はなかった」とか「あの失敗があったからこそ今の自分がある」などとしみじみ語っているひとを見かけたことはありませんか。実はそれらの出来事(偶然)が起きる以前から、彼らはその出会いも失敗もチャンスに変えてしまおうとする姿勢や態度を身につけていたということに他ありません。そうです。その幸運はけっして偶然ではありません。
 いかがでしょうか。今年はもちろん目標や計画を立てつつも、ぜひ偶然も味方につけられてみては。皆さんにとりまして、素敵な一年になることを祈念しております!!
≪メールマガジン第94号≫2019-12-02配信
【就活予報-あした晴れるかな-(第9回)】

<二人三脚>

 2017年3月20日に『エピソードの就活 ― キャリアカウンセラーが教える7つのステップ ―』というキャリア支援の教科書を晃洋書房から出版しました。それまでにも単著を出版したことはあるのですが、それでも本を1冊書き下ろすという作業はやはりキツくてシンドイ。出版にまでこぎつけたのは、執筆をはじめてから約1年後のことでした。
 そんなキツくてシンドイ作業をどうして1年間も続けることができたのか?それはひとえに編集者のおかげです。担当してくれたのはSさんという若い編集者でした。Sさんは、一回一回原稿を送る度に、もうこれ以上は書けないと投げ出してしまいそうになる弱気な私に、でも、あと1回だけ書いてみようかなと思わせるような、絶妙なコメントを毎回返信してくれるのです。「視点がおもしろいですね~」「エピソードが冴えてきていますよ!」「思わず笑ってしまいました」「その調子で、その調子で」などなど。
 本を1冊書き上げるという作業は山登りに似ています。ひとりではとても登頂できないような山でも、信頼のおけるガイドと一緒なら、「もう頂上は見えてきましたよ」「慌てずに」「そう、そう」「大丈夫だから」「ゆっくり、ゆっくり」などと声をかけてもらえるから一歩ずつ一歩ずつだけれども登れる。人間は弱い生き物です。しかし、ひとりではできないことでも、自分を確かに見守ってくれるひとがいることで、このように“ヨッコラショ”と何とか成し遂げてしまうこともできるのです。
 就活や転活も同じではないでしょうか。ひとりでやっていると、壁に向かって話しているようなものです。人間は反応がなければ、キツくてシンドイ場面をなかなか乗り越えられるものではありません。ついつい自分に負けそうになってしまいます。なので、就活や転活にもやはりガイドが必要なのです。
 「若者しごと倶楽部」をぜひ活用してください。「若者しごと倶楽部」には豊富な資料やデータがいっぱい揃っています。となりにある「新卒応援ハローワーク」に行けば、求人企業をすぐに検索することもできます。しかし、何よりも「若者しごと倶楽部」が「若者しごと倶楽部」である所以は、多くの経験豊富なキャリアコンサルタントがいらっしゃるということではないでしょうか。キャリアコンサルタントは話を聴くプロです。不安に思っていることや悩んでいることがありましたら、まずは気軽に相談してみてください。きっと皆さんのよき相談相手となっていただけるでしょう。ひとりではできないことでも二人三脚できっと乗り越えられるはずですよ。
≪メールマガジン第93号≫2019-11-01配信
【就活予報-あした晴れるかな-(第8回)】

<燃焼したことはありますか?>

 とあるバラエティー番組で、橋下徹氏が高学歴フリーターたちに授業をおこなっていました。そのなかで橋下氏がフリーターたちに「今、もう死んでもいいやと思っているひと?」と問いかける場面がありました。誰一人手を挙げるフリーターはいません。その中で、橋下氏は「実は・・・ぼくは、もういま死んでもいいと思っている」と言い放ったのです。理由は政治家としては「燃焼した」ので、たとえいま死んだとしても一片の悔いもないとのことでした。大阪都構想がうまくいかなかったから云々といったことなどではなくて「燃焼した」というのです。ちなみに橋下氏の「燃焼した」という意味には勝ち負けは一切関係ありません。勝ったとか負けたではなく、「燃焼した」かどうかが重要だというのです。
 話は変わりますが、転職には大きく2つ理由があるように思います。ひとつはミスマッチング。仕事内容や人間関係がどうしても「合わなくて」といった理由です。いまひとつは、今の職場においては自分がやれるべきこと、やるべきことは「やり切った」という理由です。「もう卒業です」などといった言い方をするひともいます。
ここで「やり切った」「もう卒業です」というのは、橋本氏がいうところの「燃焼した」ということでしょう。仕事や人間関係がイヤで辞めるわけではない。今の職場では「やれることはすべてやり切った」「できることもすべてやり切った」。なので、ポジティブに転職をしたいというわけです。
 私はそんな転職もアリだと思っています。アリどころか、今後はどんどんと増えていくことでしょう。アメリカでは、むしろこういった転職の方がスタンダードですし、サッカーや野球などといったスポーツの世界では、すでにこのような転職(移籍ですね)が当たり前です。会社が個人の面倒を一生みてくれるという時代は終わりました。これまでの日本の企業や団体は終身雇用を大前提としてきたのでゼネラリストの育成に力を注いできました。しかし、ここまで雇用慣行が崩れてきますと、個人が生きのびていくためには、どの企業や団体に行っても通用する武器をもったスペシャリストにならざるをえないのです。自然な流れといっていいでしょう。
 また結果はともかくとして、燃焼経験はきちんとその仕事や物事に向き合ったという自分に対して自信もつきます。今、正社員をめざして就活や転活をがんばっているフリーターのみなさんも多いかと思います。まずは、今おかれた自分の居場所で燃焼してください。燃焼すれば、きっと「次」がみえてくるはずですよ。
≪メールマガジン第92号≫2019-10-01配信
【就活予報-あした晴れるかな-(第7回)】

<たかが手土産、されど手土産。>

 前回9月号では、淡路島の仁井地区にて開催した流通科学大学主催による夏祭りの話を紹介しましたが、その後、地元のお世話になった方々へ学生たちとお礼訪問に行こうということになりました。ただ、手ぶらで行くのも失礼なので手土産を買って行こうという話になったのですが、以下はそのときの学生たちのやり取りです。A君「一回地元の店、どこか探してみるわ」。B君「百貨店やったら何でもありそう」。A君「そんな凝ったものじゃなくてもよくない?」。B君「お煎餅?」。C君「日持ちするものがいいかな」。A君「和菓子屋なら地元にあるよ」。C君「あー、それいいね!」。
 手土産といってもバカにできません。たとえばビジネスマンにとって手土産は重要なビジネスツールのひとつです。「たかが手土産、されど手土産」です。「誰」に「何」を渡すのか。相手は男性なのか女性なのか。若いひとなのか年配のひとなのか。その職場で働いているひとたちの人数分まであるだろうか。まさにビジネスマンとしてのセンスが問われるのが手土産といえるでしょう。
 もしみなさんなら、最寄りの駅前で適当に買ってきたとすぐにわかるような手土産をもらったとしても嬉しいでしょうか。以前に私が勤めていた職場では、「あー、またあそこの〇〇屋で買ってきたお饅頭やね。誰か適当に持って帰っといて」なんてことを、社員控え室でよく言っていたものです。手土産とはそれをお渡しするひとへの自分の思いや気持ちの表れでもあります。
 就活においては、「手土産」ということばを「自己PR」もしくは「志望動機」ということばに置き換えてみてはいかがでしょうか。第一志望の会社から単にエントリーしただけという会社まで、最寄りの駅前で買った同じ「手土産」を持って行くのか。はたまた第一志望の会社なら、その企業のことをよく見て、よく調べて、心から喜んでいただけるような「手土産」を持って行くのか。そのためには、まずは相手のことをよく観察しなければなりません。
 みなさんは、相手先様がその「手土産」を受け取った瞬間の弾けるような笑顔を想像しながら「手土産」を探せるひとでしょうか。結局は、「手土産」も「就活」も「ビジネス」も同じことなのです。自分本位ではなく、相手の立場に立って、いかに相手の期待に応えていくのか、ということです。
 みなさんも気をつけてください。面接試験で「また、駅前の〇〇屋の饅頭(自己PR・志望動機)を持ってきたでー」と人事担当者に言われないように。
≪メールマガジン第91号≫2019-09-02配信
【就活予報-あした晴れるかな-(第6回)】

<長所と短所はコインの裏表です。>

 8月17日、兵庫県淡路市仁井地区にある旧仁井小学校におきまして、流通科学大学の学生主催による「こんないいとこ!!仁井まつり」という夏祭りを開催しました。お蔭さまで祭りは大盛況。多くの地元の皆さまに喜んでいただくことができました。そして・・・このプロジェクトに参加してくれた40名の学生たちのリーダーを務めたのが、わが中山ゼミのKくん(3年生)です。
 中山ゼミでは入ゼミを志望する学生に対しては毎年「書類審査」と「面接」をおこなっているのですが、はじめてわたしの研究室を訪ねてきたときのKくんは「不愛想」「無口」「ボッーとしているなあ」というのが、正直な評価でした。
それが今回、夏祭りをとおして、わたしの彼に対する評価は一変することになります。
 祭り本番、メインイベントのひとつとして「竹灯篭」をおこなったのですが、この事前準備が大変といったらありゃしない(笑)。まずは竹林を提供していただける地元のひと探しからスタートし、次いで真夏の炎天下の竹林現場での伐採作業、そして伐採した竹を「竹灯篭」に使えるくらいまでのサイズにノコギリで一個一個切っていくのです。その数なんと800個! 何とも気が遠くなるような作業でした。
その一連の工程を最後まで指揮してくれたのがリーダーのKくんだったのです。当初、地元町内会の方々との会議では、学生たちは仕事の詰めの甘さに何度も怒られ、アイディアや提案は突き返され、地元の年配の方たちと都会の大学生とではまるでコミュニケーションすら取れないというありさまでした。
 しかしその後、幾度も粘り強く話し合いを重ねていくうちに、Kくんの「不愛想」は、仲間たちからは少々のことでは“動じないリーダー”、地元の方たちからは何度怒っても突き返してもやって来るので“気骨あるリーダー”という認識をもってもらえるようになり、「無口」は厳しい交渉の場面において百戦練磨の大人たちから巧みに意見を引き出し、「ボッーとしている」は、実は彼は典型的な熟慮行動型タイプの男で、判断や決断するまでには時間がかかるが一度決めたら雨が降ろうが槍が降ろうが、けっして弱音を吐かずに絶対に最後までやり抜くタイプの学生だったのです。
そうです。わたしはKくんを一面からしか見ていなかったのです。長所と短所はコインの裏表だなんていわれますが、まさにそのとおりでした。
今、ご自分の短所や弱みに悩んでいるみなさん。それこそが本当は長所や強みなのかもしれませんよ!!
≪メールマガジン第90号≫2019-08-01配信
【就活予報-あした晴れるかな-(第5回)】

<無人島に何か一つだけ持っていくとしたら・・・>

 みなさんは何を持って行きますか? グループごとに話し合って発表してください。
 実際にとある企業の採用試験のグループディスカッションで出されたお題です。面接官の話によりますと、ディスカッションがスタートした時点での最初の口火の切り方によって、だいたいどのようなレベルの結論が出てくるかのかがわかるそうです。
 まず、結論がうまくまとまらないグループの議論のスタートは…いきなり「生きていくためには火が必要なのでマッチかライターではないでしょうか」。「いや、ヘリコプターがあれば帰れますよ」。「だったら船でもいいんじゃないですか」。「やっぱりナイフとか銃でしょ。獲物を捕まえて食糧を確保しなければ」。「助けを求めるために狼煙というのはどうでしょう」。このようにメンバー各人がそれぞれ好きなことや思いつきを言い合うだけの空中戦をやっているうちにタイムアウト。挙句の果てに、出した結論は「ドラえもんを連れて行きます!」などというウソのようなホントの話が実際にあったそうです(笑)。
 では、結論がうまくまとまるグループの議論のスタートはといいますと・・・まずは全員で「前提」を統一してから議論をスタートさせるというのです。無人島といっても、一生その島に暮らさなければならないという「前提」なのか。たまたま船が難破してしまって漂着してきたという「前提」なのか。夏休みに友達同士で無人島に遊びに来たという「前提」なのか。その「前提」をまずはグループ内ですり合わせているというのです。最初に「前提」さえグループ内で共有できれば、あとは結論に向けて論理的な議論をすすめていくだけというわけです。
 あるとき、電車のなかで若い女の子がふたりで「やっぱり自分の彼氏はイケメンがいいよね!」という話で大いに盛り上がっていました。そこで、ひとりの女の子が「で、○○ちゃんは、芸能人やったら誰が好きナン?」ときいたそうです。もうひとりは「わたし、やっぱり佐藤健クンやわぁ」という答え。すると、訊ねた女の子の顔が一瞬エッという表情になったそうです。今度はもうひとりがききます。「わたしも言うてんから、○○ちゃんも教えてよ」。訊ねた女の子はちょっとためらいながら「そしたらあんたとタイプぜんぜん違うわ。わたしは・・・堤真一」。その後、イケメンが好きだという共通点で盛り上がっていたはずのふたりの間に微妙な空気がながれていたとのこと。
 やっぱり何事も「前提」をきちんとすり合わせておくことって大切ですね。
≪メールマガジン第89号≫2019-07-01配信
【就活予報-あした晴れるかな-(第4回)】

<百姓(ひゃくせい)的な生き方や働き方のススメ>

 歴史学者の網野善彦は、百姓とはもともとは「ひゃくせい」といい、農業のみに携わっているひとたちだけではないと指摘しました。農業をしながら漁業もおこなっていた半農半漁の民、普段は大工や石屋、鍛冶屋や篭屋、桶屋や杣人などを主たる生業としながらも合わせて農業を営んでいたようなひとたちも、網野の主張によれば百姓ということになります。
 ちなみに、わたしの4代前のご先祖さまに浅吉さんというひとがいるのですが、この浅吉さんは江戸時代末期(1844年)に生まれたひとで、主たる生業は大工だったそうですが、農業も営んでおり、何やら和算(数学)が得意だったとのことで算盤塾か寺子屋のようなものも開いていたようです。
 つまり百姓とは、浅吉さんもそうですが、多角的な経営をおこなっていた自営業者や個人事業者のことを指していたのです。
 2018年1月、厚生労働省は「モデル就業規則」を改訂し、これまでは原則禁止だった副業・兼業を認める方針を打ち出しました。というか、そもそも日本人の働き方というのは、ひとつの職業だけに特化して収入を得るというシングル・インカムの方が稀有であって、先ほどの百姓の話ではないですが、ダブル・インカム、トリプル・インカム、すなわちマルチ・インカムな働き方の方が自然だったのです。
 今現在、フリーターやパート社員、派遣社員や嘱託社員などといった非正規雇用者に対する待遇や処遇などが大きな社会問題として取り上げられていますが、もしもこれらの仕事を自分でマネジメント(組み合わせて)して生計を成り立たせていることができているのであれば、わたしから言わせればそれはもうりっぱなフリーランス(個人事業者)です。
 日本というのは、もともとはこのようにマルチ・インカムで仕事や収入を持ち寄って生計を成り立たたせていた国なのです。正社員信仰が生まれたのは近代に入ってからであり、もっというならば戦後の高度経済成長時代以降です。そして、その呪縛と強迫観念がいまだに続いているというわけです。
 あくまでも個人的な意見ではありますが、わたしは一生フリーターで生きていってもよいと思っています。問題はフリーターという働き方の方にあるのではなく、未だに「正社員でなければダメ」という考えに呪縛、強迫観念に捉われている世間の価値観や社会構造、制度やシステムの方にあります。ダイバシティなどという言葉が使われ始めて幾久しいですが、本当にそういう社会が実現しているでしょうか。今まさに、求められているのは、非正規雇用という生き方や働き方に問題があるのではなくて、このような多様な生き方や働き方を承認する思考の転換や社会全体の包括的な支援ではないでしょうか。

≪メールマガジン第88号≫2019-06-03配信
【就活予報-あした晴れるかな-(第3回)】

<AI時代の賢さ。>

 英国のオックスフォ-ド大学の研究予測によりますと、10年~20年後には今現在ある約47%のひとの仕事がなくなってしまうそうです。これはいうまでもなくAI(人工知能)に取って代わられるということを意味しています。AIがもっとも得意としている作業は、統計・データ・論理を駆使して一つの正解を導き出すという行為です。
 これまでの学校教育では「理解力」「暗記力」「計算力」といった能力に秀でたお勉強ができる生徒たちがいわゆる「賢い」という評価を与えられていました。しかし、これらの能力はAIがもっとも得意とする分野です。そうなりますと、今後は学校教育の手法やコンテンツも早急に見直しをはかっていく必要が出てくるでしょう。
 ちなみに2018年に経団連が実施した「新卒採用に関するアンケート調査」にて選考時に重視する要素のベスト3は「コミュニケーション力」「主体性」「チャレンジ精神」でした。労働には「頭脳労働」「肉体労働」「感情労働」の3つの種類があるといわれていますが、今まさにAIに取って代られようとしているのは「頭脳労働」と「肉体労働」の分野です。しかしながら、先に述べた企業が選考時に重視する要素のベスト3に共通していることはすべて人間のこころに根ざした定量化できないチカラであり、実はこのような能力がまだAIには苦手とされている作業だといわれています。すなわち「感情労働」の分野ですね。つまり企業もいくらAI化が進もうとも最後はやはり人であると考えているのです。
 ただそうなってきますと、こんな声があちこちから聞こえてきそうです。自分にはそんな「コミュニケーション力」も「主体性」も「チャレンジ精神」もありませんと。心配ご無用です。自分から自信満々にこのようなチカラをもっているなどという日本人はそうそういません。そうです、みんな苦手なのです。であるならば、重要なのはこの現実といかに向き合っていくかという覚悟でしょう。
 爆笑問題の太田光さんが、学生時代は孤独で根暗な青年だったというのは有名な話です。にもかかわらず、今や押すに押されぬ一流お笑い芸人です。どうして、と思われるかもしれませんが、実は笑いと哀しみ(あるいは悲しみ)というのはコインの裏表なのです。ほんとうの哀しみや悲しみを経験したひとでないと、本気でひとを笑わすことなどできません。苦手だけれども、できるように努力し続ける。それでお金を稼ぐ。これぞプロフェッショナルです。
 これから始まるAI時代に求められる賢さに、みなさんはどう向き合っていきますか?
≪メールマガジン第87号≫2019-05-07配信
【就活予報-あした晴れるかな-(第2回)】

<いいんじゃない、何だって。>

 今、NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』にも登場している古今亭志ん生の十八番に「火焔太鼓」という噺があります。その音源記録データは今でもたくさん残されているそうですが、それらを一言一句すべて文字起こしして比べてみると、芯となるストーリーやオチは同じだけれども、表現のしかたや伝えかたは一回一回ぜんぶ違っていたそうです。つまり、志ん生は客層(ひと)や演芸場(環境や時間)によって語り口を臨機応変に変えていたのです。
 このシーズン、わたしも就活生や転職活動をされているみなさんから面接の練習をしてほしいと頼まれることが多くなってきました。その際、さまざまな角度からいろんな質問を投げかけていくのですが、結局知りたいのは「自己㏚」と「志望動機」のふたつだけです。
 これが摩訶不思議なのですが、面接練習の直前まではごく普通に談笑していたひとたちも、ひとたび面接練習が始まりますとまったく別人のようになってしまうのです。とりわけ「自己㏚」と「志望動機」を話すときのしゃべり方や表情は・・・誠に失礼ながら、まるで大根役者の台詞のようです。ついさっきまで、あんなにナチュラルに話しをしていたのに。
 つまり、話す内容を事前に丸暗記して来ているのですね。なので、目の前に本人はいるけれども、心ここにあらずといった、おかしな空気が生まれてしまうのです。
 そもそも面接とは面接官と応募者との「対話」の場です。しかし、これでは応募者の一方的な「発表」です。「発表」であれば自分が言いたいことを言いたいだけしゃべればいい。でも、それってもはや「対話」、すなわちコミュ二ケーションとはいえないでしょう。
 ということで、丸暗記は「発表」になってしまうのでダメ。では、いったいどうすれば? わたしのお薦めは、面接官にこれだけは絶対に伝えておきたいポイントを事前に箇条書きにして整理しておくだけという方法です。
 企業は流暢に話せるひとを採用したいわけではありません。仕事ができるひとを採用したいのです。大切なことは、たとえシドロモドロになろうとも、これだけは伝えたい、伝えなければならない、ということさえ面接官に伝わればいいのです。アナウンサーの採用試験ではないのですから。ただ「これだけは絶対に伝えておきたい」というポイントだけは押さえておいてください。そして、周り(ひとや環境や時間)を自分に合わさせるのではなく、自分が周り(ひとや環境や時間)に合わせながら、面接官の目をしっかりと見て話をしてください。その思いは、話の上手下手を超えてきっと相手に通じるはずです。
 志ん生の「火焔太鼓」はぜんぶ違っていた。そのことを本人はこういってたそうです。「いいんじゃない、何だって」。要は、伝えたいことさえ伝われば、どんな表現のしかたや伝えかたでもいいんだよ、ということをきっといいたかったのでしょう。
≪メールマガジン第86号≫2019-04-01配信
【就活予報-あした晴れるかな-(第1回)】

<人生はいつも今日から。>

 この言葉、とあるカレーショップの壁に貼られていたものです。
 わたしは現在56歳、大学の教員をしています。縁あって一年間、就活コラムを担当させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
 わたしは1985年に大学を卒業後、これまで5回の転職を繰り返して現在に至っています。最初の就職先は3カ月で退職してしまい、非正規職員(今でいうフリーターですね)を経て2回目に就職したのは25歳になってからです。そして5回目の転職先である今の大学に採用されたのは52歳のときでした。
 今、ふり返ってみますと、「新卒一括採用」や「終身雇用」があたりまえの昭和から平成にかけて、こうした制度やシステムに強い反発心をもちながらこれまで就活をつづけてきたような気がします。
 このコラムが配信される4月1日はちょうど入社式の日です。ただし、昨今ではせっかく就職しても3年間で4割弱の若者たちが離職してしまうなどというデータが提出されています。なのに、「新卒一括採用」や「終身雇用」といった制度やシステムに対する考え方はいまだ旧態依然として残っています。実態に制度やシステムが追いついていない、とでもいったらいいのでしょうか。昭和や平成の常識はすでに非常識となりつつあるというのに。
 しかし昨年の秋、経団連は21年の春入社から就活や採用に係る指針廃止を正式に決定しました。これは新卒採用活動に関してこれまで規定してきたルールを一切取り止めるということです。IT企業や外資系企業などによる自由な新卒採用活動といった外的要因はもとより、経団連加盟企業のなかですら形骸化してきていた規定をもはや守り切れなくなってしまったというのがホンネでしょう。その後は、政府が混乱をさけるために現行ルールの維持を呼びかけていくとのことですが、それこそ大きなお世話です。
 とはいうものの、「新卒一括採用」や「終身雇用」にもまだ良い点はあります。しかし、それらが担保してきた強みや長所が、今では弱みや短所へと錆びてきているといった方が正しいでしょう。長所と短所はコインの裏表だといわれますが、時代や環境が変われば、長所も短所になっていきます。制度やシステムは、柔軟に変わっていかなければなりません。しかし何より、わたしたち自身もそれらの変化に柔軟に対応していきたいものです。
 冒頭のカレーショップの話に戻りますが、実はその昔、わたしが何度目かの転職活動をしていた頃にそのお店で見つけました。こんな短い言葉に、元気や勇気をもらったことを今もよく覚えています。そして…この壁紙は今もお店に貼られています。
 今日も就活をがんばっておられるみなさんに、まずはこの言葉をお贈りしたいと思います。「人生はいつも今日から」。
ひょうご・しごと情報広場
兵庫型シニアショートワーク(短時間しごと)事業